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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 灯もやや、ちらちらと青田に透く。川下の其方は、藁屋続きに、海が映って空も明い。――上の奥になるほど、樹の枝に、茅葺の屋根が掛って、蓑虫が塒《ねぐら》したような小家がちの、それも三つが二つ、やがて一つ、窓の明《あかり》も射さず、を離れた夕炊《ゆうかしぎ》の煙ばかり、細く沖で救《すくい》を呼ぶ白旗のように、風のまにまに打靡く。海の方は、暮が遅くて灯《あかり》が疾く、山の裾は、暮が早くて、燈《ともしび》が遅いそうな。

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