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『義血侠血』
青空文庫
このとき渠は始めて心着きて驚けり。かかる深夜に人目を窃《ぬす》みて他の門内に侵入するは賊の挙動《ふるまい》なり。われははからずも賊の挙動をしたるなりけり。
ここに思い到りて、
白
糸はいまだかつて念頭に浮かばざりし盗《とう》というなる金策の手段あるを心着きぬ。ついで懐なる兇器に心着きぬ。これ某らがこの手段に用いたりし記念《かたみ》なり。
白
糸は懐に手を差し入れつつ、頭を傾けたり。
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