検索結果詳細
『義血侠血』 青空文庫
ここに思い到りて、白糸はいまだかつて念頭に浮かばざりし盗《とう》というなる金策の手段あるを心着きぬ。ついで懐なる兇器に心着きぬ。これ某らがこの手段に用いたりし記念《かたみ》なり。白糸は懐に手を差し入れつつ、頭を傾けたり。
良心は疾呼《しっこ》して渠を責めぬ。悪意は踴躍して渠を励ませり。渠は疾呼の譴責《けんせき》に遭《あ》いては慚悔《ざんかい》し、また踴躍の教峻を受けては然諾せり。良心と悪意とは白糸の恃《たの》むべからざるを知りて、ついに迭《たが》いに闘いたりき。
547/706
548/706
549/706
[Index]