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 『義血侠血』 青空文庫

 良心は疾呼《しっこ》して渠を責めぬ。悪意は踴躍して渠を励ませり。渠は疾呼の譴責《けんせき》に遭《あ》いては慚悔《ざんかい》し、また踴躍の教峻を受けては然諾せり。良心と悪意とは白糸の恃《たの》むべからざるを知りて、ついに迭《たが》いに闘いたりき。
「道ならないことだ。そんな真似をした日には、二度と再び世の中に顔向けができない。ああ、恐ろしいことだ、……けれども才覚ができなければ、ぬよりほかはない。この世に生きていないつもりなら、羞汚《はじ》も顔向けもありはしない。大それたことだけれども、金は盗ろう。盗ってそうしてのうのう!」

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