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 『春昼』 泉鏡花を読む

 是について、何かいはれのございましたことか、一々女の名と、亥年、午年、幾歳、幾歳、年齢とが彫りつけてございましてな、何時の世にか、諸国の婦人たちが、挙つて、心願を篭めたものでございませう。処で、雨露に黒髪は霜と消え、袖裾も苔と変つて、影ばかり残つたが、お面の細く尖つた処、以前は女体であつたらうなどといふ、いや女体の地蔵といふはありませんが、扨て然う聞くと、なほ気味が悪いではございませんか。
 えゝ、つかぬことを申したやうでありますが、客人の話について、些と考へました事がござる。客人は、それ、其の山路を行かれたので――此の観音の御堂を離れて、」

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