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 『義血侠血』 青空文庫

 良心に逐われて恐惶せる盗人は、発覚を予防すべき用意に遑《いとま》あらざりき。渠が塀ぎわに徘徊せしとき、手水口《ちょうずぐち》を啓きて、家内の一個《ひとり》は早くすでに白糸の姿を認めしに、渠は鈍《おぞ》くも知らざりけり。
 鉢前の雨戸は不意に啓きて、人は面を露わせり。糸あなやと飛び退《すさ》る遑《ひま》もなく、
「偸児《どろぼう》!」と男の声は号《さけ》びぬ。

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