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 『義血侠血』 青空文庫

 渠はもとより一点の害心だにあらざりしなり。われはそもそもいかにしてかかる不敵の振舞をなせしかを疑いぬ。見れば、わが手は確かに出刃を握れり。その出刃は確かに男の胸を刺しけるなり。胸を刺せしによりて、男は殪《たお》れたるなり。されば人を殺せしはわれなり、わが手なりと思いぬ。しかれども糸はわが心に、わが手に、人を殺せしを覚えざりしなり。渠は夢かと疑えり。

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