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 『義血侠血』 青空文庫

 白糸の耳には百雷の一時に落ちたるごとく轟けり。精神錯乱したるその瞬息に、懐なりし出刃は渠の右手《めて》に閃きて、縁に立てる男の胸をば、柄《つか》も透《とお》れと貫きたり。
 戸を犇《ひしめ》かして、男は打ち僵《たお》れぬ。朱《あけ》に染みたるわが手を見つつ、重傷《いたで》に唸《うめ》く声を聞ける糸は、戸口に立ち竦みて、わなわなと顫いぬ。

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