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 『歌行燈』 従吾所好

 此の場合なり、何となく、お千も起居に身体が緊つた。
 静かに炭火を移させながら、捻平は膝をずらすと、革鞄などは次の室へ……其だけ床の間に差置いた……車の上でも頸に掛けた風呂敷包を、重いもののやうに両手で柔かに取つて、膝の上へ据ゑながら、お千のを除けて、火鉢の上へ片手を裏表かざしつゝ、

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