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 『歌行燈』 従吾所好

「心ばかりで長い事、思つて居りまする人があつて。……芸も容色〈きりやう〉もないものが、生意気を云ふやうですが、……たとひ殺されても、死んでもと、心願掛けて居りました。
 一晩〈あるばん〉も、矢張蒼い灯の船に買はれて、其の船頭衆の言ふ事を肯かなかつたので、此方の船へ突返されると、艫の処に行火〈あんか〉を跨いで、どぶろくを飲んで居た、私を送りの若い衆がな、玉代だけ損をしやはれ、此方衆の見る前で、此の女を、士にして慰まうと、月の良い晩でした。

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