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 『歌行燈』 従吾所好

 一晩〈あるばん〉も、矢張蒼い灯の船に買はれて、其の船頭衆の言ふ事を肯かなかつたので、此方の船へ突返されると、艫の処に行火〈あんか〉を跨いで、どぶろくを飲んで居た、私を送りの若い衆がな、玉代だけ損をしやはれ、此方衆の見る前で、此の女を、海士にして慰まうと、月の良い晩でした。
 胴の間で着物を脱がして、膚の紐へなはを付けて、倒〈さかさま〉にの深みへ沈めます。づん/\づんと沈んでな、最う奈落かと思ふ時、釣瓶のやうにきり/\と、身体を車に引上げて、髪の雫も切らせずに、又へ突込みました。

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