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 『歌行燈』 従吾所好

 胴の間で着物を脱がして、膚の紐へなはを付けて、倒〈さかさま〉に海の深みへ沈めます。づん/\づんと沈んでな、最う奈落かと思ふ時、釣瓶のやうにきり/\と、身体を車に引上げて、髪の雫も切らせずに、又海へ突込みました。
 此の時な、其の繋り船に、長崎辺の伯父が一人乗込んで居ると云うて、お小遣の無心に来て、泊込んで居りました、二見から鳥羽がよひの馬車に、馭者をします、寒中、襯衣〈しやつ〉一枚に袴服〈ずぼん〉を穿いた若い人が、私のそんなにされるのが、余り可哀相な、と然う云うて、伊勢へ帰つて、其の話をしましたので、今、あの申しました。……

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