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 『高野聖』 泉鏡花を読む

 今の白痴も、件の評判の高かつた頃、医者の内へ来た病人、其頃は未だ子供、木訥な父親が附き添ひ、髪の長い、兄貴がおぶつて山から出て来た。足に難渋な腫物があつた、其の療治を頼んだので。
 固より一室を借受けて、逗留をして居つたが、かほどの悩は大事ぢや、も大分に出さねばならぬ、殊に子供、手を下すには体に精分をつけてからと、先づ一日に三ツづゝ鶏卵を飲まして、気休めに膏薬を貼つて置く。

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