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『歌行燈』
従吾所好
又月の良い晩でした。あゝ、今の御主人が、深切なだけに尚ほ辛い。……何の、身体の切ない、苦しいだけは、生命が絶えれば其で済む。一層また鳥羽へ行つて、あの巌に掴まつて、(こいし、こいし、)と泣かうか知らぬ、膚の紐になはつけて、
海
へ入れられるが気安いやうな、と島も
海
も目に見えて、ふら/\と月の中を、千鳥が、冥土の使ひに来て、連れて行かれさうに思ひました。……格子前へ流しが来ました。
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