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『高野聖』 泉鏡花を読む
其の膏薬を剥がすにも親や兄、又傍のものが手を懸けると、堅くなつて硬ばつたのが、めり/\と肉にくツついて取れる、ひい/\と泣くのぢやが、娘が手をかけてやれば黙つて耐へた。
一体は医者殿、手のつけやうがなくつて身の衰をいひ立てに一日延しにしたのぢやが三日経つと、兄を残して、克明な父親は股引の膝でずつて、あとさがりに玄関から土間へ、草鞋を穿いて又地に手をついて、次男坊の生命扶かりまするやうに、ねえ/\、というて山へ帰つた。
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