検索結果詳細


 『歌行燈』 従吾所好

 私はな、よう覚悟はして居たが、天狗様に攫はれるかと思ひましたえ。
 あとは夢やら現やら。明方内へ帰つてからも、其の後は二日も三日も唯茫として居りましたの。……鼓ヶ岳の松風と、五十鈴川の流の音と聞えます、雑木の森の暗い中で、其の方に教はりました。……舞も、あの、さす手も、ひく手も、唯背後から背中を抱いて下さいますと、私の身体が、舞ひました。其れだけより存じません。

 617/744 618/744 619/744


  [Index]