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『歌行燈』 従吾所好
あとは夢やら現やら。明方内へ帰つてからも、其の後は二日も三日も唯茫として居りましたの。……鼓ヶ岳の松風と、五十鈴川の流の音と聞えます、雑木の森の暗い中で、其の方に教はりました。……舞も、あの、さす手も、ひく手も、唯背後から背中を抱いて下さいますと、私の身体が、舞ひました。其れだけより存じません。
尤も、私が、あの、鳥羽の海へ投入れられた、其の身の上も話しました。其の方は不思議な事で、私とは敵のやうな中だ事も、種々入組んでは居りますけれど、鼓ヶ岳の裾の話は、誰にも言ふな、と口留めをされました。何んにも話がなりません。
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