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 『人魚の祠』 青空文庫

 唯《と》、其の白い手も見える、莞爾《につこり》笑ふ面影さへ、俯向くのも、仰ぐのも、手に手を重ねるのも其の微笑《ほゝゑ》む時、一人の肩をたゝくのも……莟がひら/\開くやうに見えながら、厚い硝子窓を隔てたやうに、まるつ切《きり》、声が……否《いや》、四辺《あたり》は寂然《ひつそり》して、ものの音も聞えない。
 向つて左の端に居た、中でも小柄なのが下して居る、棹が満月の如くに撓《しな》つた、と思ふと、上へ絞つた糸が真直に伸びて、するりとの空へ掛つた鯉が――」

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