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 『日本橋』 青空文庫

 引切の無い人通りも、およそ途中で立停って、芸者の形を見物するのは、鰻屋の前に脂気を嗅ぐ、奥州のお婆さんと同じ恥辱だ、という心得から、誰も知らぬ顔で行違う。……もっとも対手は小児である。
 世渡やここに一|人、飴屋の親仁は変な。叱言を、と思う頬辺を窪めて、もぐもぐと呑込んで黙言の、眉毛をもじゃ。若い妓は気の毒なり、小児たちは常得意。内心痛し、頗る痒しで、皺だらけの手の甲を顋の下で摺ってござった。

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