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 『春昼』 泉鏡花を読む

 我が散策子は、其処を志して来たのである。爾時、これから参らうとする、前途の石段の真下の処へ、殆ど路の幅一杯に、両側から押被さつた雑樹の中から、真向にぬつと、大な馬の顔がむく/\と涌いて出た。
 唯見る、それさへ不意な上、胴体は唯一ツでない。鬣に鬣が繋がつて、胴に胴が重なつて、凡そ五六間があひだ獣の背である。
 咄嗟の間、散策子は杖をついて立窘んだ。

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