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 『歌行燈』 従吾所好

 あはれや宗山。見る内に、額にたら/\と衝と汗を流し、声を振絞ると、頤から胸へ膏〈あぶら〉を絞つた……あの其の大きな唇が海鼠を干したやうに乾いて来て、舌が硬〈こは〉つて呼吸が発奮〈はず〉む。わなわな震へる手で、畳を掴むやうに、うたひながら猪口を拾はうとする処、ものの本を未だ一枚とうたはぬ前、ピシリと其処へ高拍子を打込んだのが、下腹へ響いて、ドン底から節が抜けたものらしい。

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