検索結果詳細


 『人魚の祠』 青空文庫

 御覧なさい。釣済ました当の人が、釣棹を突離《つきはな》して、柳の根へ靄を枕に横倒《よこだふ》しに成つたが疾いか、起るが否や、三人ともに手鞠のやうに衝《つ》と遁げた。が、遁げるのが、其の靄を踏むのです。鈍《どん》な、はずみの無い、崩れる綿を踏越し踏越しするやうに、褄が縺《もつ》れる、裳《もすそ》が乱れる……其が、やゝ少時《しばらく》の間見えました。

 65/122 66/122 67/122


  [Index]