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 『半島一奇抄』 青空文庫

 いや、嘘のような話です――遥《はるか》に蘆《あし》の湖《こ》を泳ぐ馬が、ここへ映ったと思ったとしてもよし、軍書、合戦記の昔をそのまま幻に視《み》たとしても、どっち道夢見たように、瞬間、馬だと思ったのは事実です。
 やあい、そこへ遁《に》げたい……泳いでらい、畜生々々。わんぱくが、四五人ばらばらと、畠《はたけ》の縁《へり》へ両方から、向う岸へ立ちました。
 ――鼠じゃ……鼠じゃ、畜生めが――

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