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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 と更めて顔を見る目も、法師は我ながら遙々《はるばる》と海を視《なが》める思いがした。旅の窶《やつれ》が何となく、袖を圧して、その単衣の縞柄にも顕れていたのであった。
 「そして貴僧《あなた》は、」
 「これは申後《もうしおく》れました、私は信州松本の在、至って山家のものでございます。」

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