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 『人魚の祠』 青空文庫

 一体あの辺には、自動車か何かで、人が一日がけと云ふ遊山宿、乃至、温泉のやうなものでも有るのか、何《ど》うか、其の後まだ尋ねて見ません。其が有ればですが、それにした処で、近所の遊山宿へ来て居たのが、此の沼へ来て釣をしたのか、それとも、何の国、何の里、何の池で釣つたのが、一種の蜃気楼の如き作用で此処へ映つたのかも分りません。余り静《しづか》な、もの音のしない様子が、夢と云ふよりか其の海市《かいし》に似て居ました。

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