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 『歌行燈』 従吾所好

 は、づるいな。……案ずるに我が家の門附〈かどづけ〉を聞徳〈きゝどく〉に、いざ、其の段に成つた処で、件の(出ないぜ。)を極めてこまそ心積りを、唐突〈だしぬけ〉に頬被を突込まれて、大分狼狽へたものらしい。尤も居合はした客はなかつた。
 門附は、澄まして、背後じめに戸を閉〈た〉てながら、三味線を斜〈はす〉にずつと入つて、
「あい、親方は出ずとも可いのさ。私の方で入るのだから。……ねえ、女房〈おかみ〉さん、そんなものぢやありませんかね。」

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