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 『歌行燈』 従吾所好

 門附は、澄まして、背後じめに戸を閉〈た〉てながら、三味線を斜〈はす〉にずつと入つて、
「あい、親方は出ずとも可いのさ。私の方で入るのだから。……ねえ、女房〈おかみ〉さん、そんなものぢやありませんかね。」
 と些と笑声が交つて聞えた。

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