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 『義血侠血』 青空文庫

 渠はこのときまで、一箇《ひとり》の頼もしき馬丁《べっとう》としてその意中に渠を遇せしなり。いまだかくのごとく畏敬すべき者ならんとは知らざりき。ある点においては渠を支配しうべしと思いしなり。されども今この検事代理なる村越欣弥に対しては、その一髪をだに動かすべき力のわれにあらざるを覚えき。ああ、闊達豪放なる滝の糸! 渠はこのときまで、おのれは人に対してかくまで意気地なきものとは想わざりしなり。

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