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 『義血侠血』 青空文庫

 恩人の顔は蒼白《あおざ》めたり。その頬は削《こ》けたり。その髪は乱れたり。乱れたる髪! その夕べの乱れたる髪は活溌溌《かつはつはつ》の鉄拐《てっか》を表わせしに、今はその憔悴を増すのみなりけり。
 渠は想えり。濶達豪放の女丈夫! 渠は垂の病蓐《びょうじょく》に横たわらんとも、けっしてかくのごとき衰容をなさざるべきなり。烈々たる渠が心中の活火はすでに燼《き》えたるか。なんぞ渠のはなはだしく冷灰に似たるや。

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