検索結果詳細


 『義血侠血』 青空文庫

 渠は想えり。濶達豪放の女丈夫! 渠は垂死の病蓐《びょうじょく》に横たわらんとも、けっしてかくのごとき衰容をなさざるべきなり。烈々たる渠が心中の活火はすでに燼《き》えたるか。なんぞ渠のはなはだしく冷灰に似たるや。
 欣弥はこの体を見るより、すずろ憐愍《あわれ》を催して、胸も張り裂くばかりなりき。同時に渠はおのれの職務に心着きぬ。私をもって公に代えがたしと、渠は拳を握りて眼を閉じぬ。

 685/706 686/706 687/706


  [Index]