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 『国貞えがく』 青空文庫

 両側に軒の並んだ町ながら、この小北の向側《むこうがわ》だけ、一軒づもりポカリと抜けた、一町内の用心水《ようじんみず》の水溜《みずたまり》で、石畳みは強勢《ごうせい》でも、緑晶色《ろくしょういろ》の大溝になっている。
 向うの溝から鰌にょろり、こちらの溝から鰌にょろり、と饒舌《しゃべ》るのは、けだしこの溜《みずたまり》からはじまった事であろう、と夏の夜店へ行帰《ゆきかえ》りに、織次は独りでそう考えたもので。

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