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 『五大力』 従吾所好

 夜も恁う更けると、晃めく星は灯よりも明るい。消した梅川が薄青く、紙も透通るばかりに成つて、寒参詣が手ン手に、袖へ、足許へ引着けて、呼吸を凝らして潜まり返つた弓張提灯の白い影が、輝く明星に冴渡る、大路の霜よりは暗かつた。
 蓮歩〈れんぽ〉の音よ、遠くから、からんと鳴つて、玉の近づくが如く響いたが――地獄を遁げて星に〓〓〈さまよ〉ふ蘇生〈よみがへ〉つて幽霊めく――寒参詣の侠〈きほひ〉どもを、路の両側に踞まらせて、前後〈あとさき〉遠く犬も鳴かぬ、冷たく々〈しろ/゛\〉とある地〈つち〉に、銀の糸の響を伝へて、気勢が近づく。

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