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 『五大力』 従吾所好

 両側の棟が沈んで、裳に近く、輿に参る。……其の上を、渡るが如く、すら/\と、此の梅川の店の前を、汐見橋の方へ、向つて行く時、親仁が控へる袖を払つて、小弥太は其でも乗棄てた車を楯に、半ば気怯〈きおく〉れしながら密と覗いた。
 駒下駄が、つらりと照つた。
 捌く褄に颯と燃えつゝ、炎の氷つた紅が靡くと、霜の色が淡〈うす〉く揺れかゝつて、掻消すばかり、弱腰に、帯の錦の雲もないのに、裳は重いまでずらりとした。

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