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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「ト思うと一呼吸《ひといき》に、油壺をかけて突壊《つきこわ》したもんだから、流れるような石油で、どうも、後《あと》二日ばかり弱りました。
 爾時《そのとき》は幸《さいわい》に、当人、手に疵をつけただけ、勢《いきおい》で壊したから、火はそれなり、ぱったり消えて、何の事もありませんでしたが、もしやの時と、皆が心掛けて置きました、蝋燭を点けて、跡始末に掛ると、さあ、可訝《おかし》いのは、今の、怪我で取落した小刀《ナイフ》が影も見えないではありませんか。

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