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 『眉かくしの霊』 泉鏡花を読む

「話は拙くつても、何となく不気味だね。其の口が血だらけなんだ。」
「いや、如何にも。」
「あゝ、よく無事だつたな、と私が言ふと、何うして? と訊くから、然う云ふのが、慌てる銃猟家だの、魔のさした猟師に、峰越の笹原から狙撃に二つ弾丸を食ふんです。……場所と言ひ……時刻と言ひ……昔から、夜待、あけ方の鳥あみには、魔がさして、怪しい事があると言ふが、まつたく其は魔がさしたんだ。だつて、覿面に綺麗な鬼に成つたぢやあないか。……何うせ然うよ。……私は鬼よ――。でも人に食はれる方の……なぞと言ひながら、でも可恐いわね、ぞつとすると、又口を手巾で圧へて居たのさ。」

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