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『歌行燈』
従吾所好
「串戯〈じようだん〉だ、強請〈ゆする〉んぢやありません。此方が客だよ、客なんですよ。」
細長い土間の一方は、薄汚れた縦に六畳ばかりの市松畳、其処へ上れば坐れるのを、釜に近い、床几の上に、ト足を伸ばして、
「何うもね、寒くつて堪らないから、一杯御馳走に成らうと思つて。えゝ、親方、決して其の御迷惑を掛けるもんぢやありません。」
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