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 『婦系図』 青空文庫

 何の話? と声のはげしいのを憂慮《きづか》って、階子段の下でそっと聞くと、縁談でございますよ、とお源の答えに、ええ、旦那の、と湯上りの颯と上気したの色を変えたが、いいえ、河野様が御自分の、と聞いて、まあ、と呆れたように莞爾して、忍んで段を上って、上り口の次の室《ま》の三畳へ、欄干《てすり》を擦って抜足で、両方へ開けた襖の蔭へ入ったのを、両人《ふたり》には気が付かずに居るのである。

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