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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 自分のだけに、手を繃帯した水兵の方が、一番に蚊帳を出ました。
 返す気で、在所《ありか》をおっしゃるからは仔細はない、と坊さんがまた這出して、畳に擦附けるように、耳を澄ます。と兵の方は、真中で耳を傾けて、腕組をして立ってなすったっけ。見当がついたと見えて、目で知らせ合って、上下で頷いて、その、貴僧《あなた》の背後《うしろ》になってます、」

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