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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 折から玄関の戸を叩きて、「頼む、頼む。と音訪《おとな》ふ者あり。聞覚えある声は其、とお録内より戸を開けば、外《おもて》よりずつと入るは下男を連れたる紳士なりけり。之《こ》は高田駄平とて、横浜に住める高利貸にて、得三とは同気相集る別懇の間柄なれば、非義非道を以つて有名《なだか》く、人の活血《いきち》を火吸器《すひふくべ》と渾名《あだな》のある男なり。召連れたる下男は銀平といふ、高田が気に入りの人非人。いづれも法衣《ころも》を絡《まと》ひたる狼ぞかし。

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