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 『人魚の祠』 青空文庫

 此が、もつと奥へ詰めて張つてあれば、絹一重の裡は、すぐに、御廚子《みづし》、神棚と云ふのでせうから、誓つて、私は、覗くのではなかつたのです。が、堂の内の、寧ろ格子へ寄つた方に掛つて居ました。
 何心なく、端を、キリ/\と、手許《てもと》へ、絞ると、蜘蛛の巣のかはりに幻の綾を織つて、脈々として、を撫でたのは、薔薇か菫かと思ふ、いや、それよりも、唯今思へば、先刻《さつき》の花の匂です、何とも言へない、甘い、媚《なまめ》いた薫《かをり》が、芬《ぷん》と薫つた。」

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