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『草迷宮』
鏡花とアンティークと古書の小径
「宵には何事も
ありません
でした。可い塩梅な酔心地で、四方山の話をしながら、螽《いなご》一ツ飛んじゃ来ない。そう言や一体蚊もおらんが、大方その怪物《ばけもの》が餌食にするだろう。それにしちゃ吝な食物だ――何々、海の中でも親方となるとかえって小さい物を餌にする。鯨を見ろ、しこ鰯だ、なぞと大口を利いて元気でしたが、やがて酒はお積りになる、夜が更けたんです。
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