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 『蛇くひ』 青空文庫

「応」は普通の乞食《こつじき》と斉《ひと》しく、見る影もなき貧民なり。頭髪は婦人《をんな》のごとく長く伸びたるを結ばず、肩より垂れて踵《かゝと》に到る。跣足《せんそく》にて行歩甚だ健なり。容顔隠険の気を帯び、耳敏《さと》く、気鋭《するど》し。各自《おの/\》一條の杖を携へ、続々市街に入込みて、軒毎《のきごと》に食を求め、与へざれば敢て去らず。
 初めは人皆懊悩《うるさゝ》に堪へずして、渠等《かれら》を罵り懲らせしに、争はずして一旦は去れども、翌日驚く可き報怨《しかへし》を蒙りてより後は、見す/\米銭を奪はれけり。

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