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『蛇くひ』 青空文庫
渠等《かれら》は己《おのれ》を拒みたる者の店前《みせさき》に集り、或は戸口に立並び、御繁昌の旦那吝《けち》にして食を与へず、餓ゑて食《くら》ふものの何なるかを見よ、と叫びて、袂《たもと》を深《さ》ぐれば畝々《うね/\》と這出づる蛇《くちなは》を掴みて、引断《ひきちぎ》りては舌鼓《したうち》して咀嚼し、畳とも言はず、敷居ともいはず、吐出《はきいだ》しては舐《ねぶ》る態《さま》は、ちらと見るだに嘔吐を催し、心弱き婦女子は後三日の食を廃して、病《やまひ》を得ざるは寡なし。
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