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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
さっくと削った荒造の仁王尊が、引組《ひっく》む状《さま》の巌続《いわつづ》き、海を踏んで突立つ間に、倒《さかさ》に生えかかった竹藪を一叢隔てて、同じ巌の六枚屏風、月には蒼き俤立とう――ちらほらと松も見えて、いろいろの浪を縅した、鎧の袖を〓《しぶき》に翳す。
「あれを貴下《あなた》、お通りがかりに、御覧《ごろう》じはなさりませんか。」
と背向《うしろむ》きになって小腰を屈め、姥は七輪の炭をがさがさと火箸で直すと、薬缶《やかん》の尻が合点で、丁《ちゃん》と据わる。
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