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 『春昼』 泉鏡花を読む

 尤も、御堂のうしろから、左右の廻廊へ、山の幕を引廻して、雑木の枝も墨染に、其処とも分かず松風の声。
 渚は浪の雪を敷いて、砂に結び、巌に消える、其の都度音も聞えさう、但残惜いまでぴたりと留んだは、きりはたり機の音。
 此処よりして見てあれば、織姫の二人の姿は、菜種の花の中ならず、蒼海原に描かれて、浪に泛ぶらむ風情ぞかし。

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