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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 もろいの、何の、ぼろぼろと朽木のようにその満月が崩れると、葉末の露と一つに成って、棟の勾配を辷り落ちて、消えたは可いが、ぽたりぽたり雫がし出した。頸と言わず、肩と言わず、降りかかって来ましたが、手を当てる、とべとりとして粘る。嗅いで試《み》ると、いや、貴僧《あなた》、悪甘い匂《におい》と言ったら。
 夜深しに汗ばんで、蒸々《むしむし》して、咽喉《のど》の乾いた処へ、その匂い。腥いより堪りかねて、縁側を開けて、私が一番に庭へ出ると、皆も跣足で飛下りた。

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