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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 唯《ト》台所の方を、どうやら嫋娜《すらり》とした、背の高い御婦人が、黄昏に忙しい裾捌きで通られたような、ものの気勢《けはい》もございます。
 何となく賑かな様子が、七輪に、晩のお菜《かず》でもふつふつ煮えていようという、さ豆腐屋――ん、と町方ならば呼ぶ声のしそうな様子で。
 さては婆さんに試されたか、と一旦は存じましたが、こう笠を傾けて遠くから覗込みました、勝手口の戸からかけて、棟へ、高く烏瓜の一杯にからんだ工合が、何様、何ケ月も閉切らしい。

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