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『薬草取』 青空文庫
今だってやっぱり、私は同一《おなじ》この国の者なんですが、その時は何為《なぜ》か家を出て一月余《あまり》、山へ入って、かれこれ、何でも生れてから死ぬまでの半分は〓〓《さまよ》って、漸々《ようよう》其処《そこ》を見たように思うですが。」
高坂は語りつつも、長途《ちょうと》に苦《くるし》み、雨露《あめつゆ》に曝《さら》された当時を思い起すに付け、今も、気弱り、神《しん》疲れて、ここに深山《みやま》に塵《ちり》一つ、心に懸《かか》らぬ折ながら、なおかつ垂々《たらたら》と背《そびら》に汗。
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