検索結果詳細


 『古狢』 青空文庫

 通り雨は一通り霽《あが》ったが、土は濡れて、冷くて、翡翠《かわせみ》の影が駒下駄を辷《すべ》ってまた映る……片褄端折《かたづまはしょり》に、乾物屋の軒を伝って、端緒《べにはなお》の草履ではないが、ついと楽屋口へ行く状《さま》に、肩細く市場へ入ったのが、やがて、片手にビイルの壜《びん》、と見ると片手に持った硝子盃《コップ》が、光りを分けて、二つになって並んだのは、お町さんも、一口つき合ってくれる気か。

 89/310 90/310 91/310


  [Index]