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 『薬草取』 青空文庫

 それと見る目も敏《さと》く、
「もし、御案内がてら、あの、私がお前《さき》へ参りましょう。どうぞ、その方がお話も承《うけたまわ》りようございますから。」
 一議《いちぎ》に及ばず、草鞋《わらじ》を上げて、道を左へ片避《かたよ》けた、足の底へ、草の根が柔《やわらか》に、葉末《はずえ》は脛《はぎ》を隠したが、裾《すそ》を引く荊《いばら》もなく、天地《てんち》閑《かん》に、虫の羽音《はおと》も聞えぬ。

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